投資額・売上・経費・利益・・・
数字公開
ランドリービジネスのプロのための業界紙
「全国ドライ新聞」に掲載された当社代表・中西正人の記事を全文掲載します。
コインランドリー経営の成功のコツ
需要が拡大する市場に、新たな事業の柱を立てる!
~儲かるのか?儲からないのか?儲けたいなら、どう作れば良いのか?~
今、にわかに注目を集めはじめた「コインランドリー」。1店舗の売上高は、どのくらい?
「中西さん、コインランドリーって、儲かるのですか?」
最近、クリーニング業界のご支援先のみならず、異業種の経営者、幹部の皆様からも、こんな質問を多く受けるようになってきました。
ここ1年間のうちに、テレビや雑誌などマスメディアが、消費者向けに「便利なコインランドリーの今」を紹介し、経済ニュース番組でも「コインランドリー経営に注目!」等の特集が組まれることが多くなりました。我々、クリーニング業界の展示会でも、今年は「コインランドリー」の展示会が、同時開催されるそうです。
これまでコインランドリーを運営する人は、個人オーナーが主流でした。「空き物件を埋めるため、土地の個人大家さんがコインランドリーを経営している」というケースです。
これからは、会社が「ビジネス」として行うことが主流となってゆくことでしょう。切り替わりのタイミングが「今」ということです。
「成長サイクル」にある業種への本格参入のラストチャンスが、巡ってきています。
私ども日本売上アップ研究所でも、以前は、クリーニング会社へのコンサルティングの「おまけ」程度で、クリーニング店舗に併設して運営しているコインランドリーに対して、アドバイスを行っていました。
しかし、5年程前から本格的にコインランドリーの売上アップについても、本格的なアドバイスを求められるようになり、今では、集中的に調査、及び実践支援を行っています。
今回のレポートでは、その概要について、お伝えしてゆきます。
気になるコインランドリーの売上高は、それなりの繁盛店で年間700万円~800万円台くらい。
平均的な売上高だと、年間500万円~600万円台くらい。年1000万円以上の売上なら、超繁盛店と言えるレベルです。もちろん、規模や立地条件、運営方法等にもよります。
正確な個店別の売上予測の方法もあるのですが、ここでは割愛させていただきます。
※資料01
ざっくりとした感覚で言えば「あのコインランドリー、いつ見ても、1台くらいしか動いていないね」というお店で、実は、繁盛店クラスの「700~800万円クラス」の売上となっています。普段の晴れた日に1台でも動いているお店では、雨の日になれば、乾燥機が何台も動いている・・・という状態になっているはずです。
メインのユーザーは、どんな人?なぜコインランドリーを使うのか?
「家に洗濯機がない人って、未だにいるの?」「学生や一人暮らしの多い街でないと、出店しても駄目でしょ?」「所得層の低い人が来るのでしょ?」
まだ、コインランドリーを作ったことのない皆様からは、こんな質問も良く受けます。
現在の繁盛店のコインランドリーのお客様を見ていると、これが全く逆なのです。「家に洗濯機がある、平均的所得層のファミリー世帯」が利用しています。
コインランドリーを「時間短縮」のための一種の「ぜいたくサービス」として利用する人が、多くなっているのです。
たとえば、干すのと取り込むのが面倒だから、コインランドリーで乾燥機を使う。干すよりも仕上がりがふっくらするから、乾燥機を使う。
洗濯から乾燥までの手順を一気に飛ばしてしまいたいから洗濯乾燥機を使う。。。そんな「時間や快適さをお金で買う」という利用動機が多くなっているのです。
ヒトは、便利さや贅沢を覚えてしまうと、そこから逃れられなく生き物です。携帯電話やスマートフォンを持ってしまった人は、家の固定電話に戻ることはできません。たとえ「世帯当たり通信費」が以前よりも、高くなったとしても。
ウォシュレットのトイレも同じ、スターバックスコーヒーも同じ。コインランドリー市場は、今、これらと同様の性質(=便利さ・快適さ)を浸透させている段階にあると見ています。
そして、需要やマーケットが拡大しているのは、このような「新たな客層」が、どんどん開拓されていっているからである・・・と見ています。必然的に、これらの客層が好むような店舗づくり、機械の台数構成、サービス提供等々を行ってゆくことが、これから勝ち残るコインランドリーの条件となってきます。
現実に即した「リアル」な「投資対効果」
今から10年以上前、コインランドリーの経営にとって、最大の難点は「初期投資の大きさ」にありました。
理想的な台数一式を新品で揃えようとすれば、機械と設置だけで最低でも2000万円は覚悟しなければならない・・・と言われていた時代でした。
初期投資を安く抑え、儲けを生み出すために、中古機械を導入し、1000万円以内でオープンさせることが基本路線でした。
それが、現在では、各社の企業努力と競争が進み、新品の機械で1000万円~1500万円程度の予算でも、コインランドリーを立ち上げることもできるようになってきました。
ここで最近の「コインランドリーの投資採算モデル」をご紹介します。
※資料02
当社・日本売上アップ研究所は、特定の機械メーカー様との提携は行わず、コインランドリーにおけるFC的なことも行わず、ただ、ご支援先のコインランドリーに対して、コンサルタントとして純粋に売上を上げる取り組みを行っていますので、かなり中立的な立場で、現実に即した数字やノウハウを公開しているはずです。
前提条件として、建物の投資(看板や内装、設備工事、取得費等々)には、少し多めの500万円を見込んでいます。これは、既存のコインランドリーと戦うためには、少し余分にお金をかける必要があることに備えています。
そして、機械への投資を1000万円の場合と、1500万円の場合の2通りで試算。
さらに、売上が500万円の場合、700万円の場合、1000万円の場合で、利益や投資回収の年数・利回りがどうなるか?を、実際の数字に即して試算しています。
売上の上下によって、出費も上下する「変動費」には、主にガス・水道光熱費・洗剤代が含まれ、安全に30%を見込みます。実際は25%程度と言われています。
固定費の中の減価償却費は、水洗機、乾燥機、新品、中古、建物、内装、看板等々、投資する対象によって償却期間が異なりますので、平均的に償却期間を10年で見ています。
利益と減価償却費の合算で出てくる「キャッシュフロー」が、実際に1年間で手元に残るお金。
税金等も考慮に入れず、単純に「投資金額」÷「キャッシュフロー」で、初期投資を回収できる期間(年)を算出。利回りも計算されています。
コインランドリーは利回り20%。マンション投資・不動産投資よりは、儲かる
たとえば、中古のマンションを買って、誰かに貸す・・・という不動産投資の場合、非常にうまくいって利回り10%(1億円の投資で家賃収入1000万円。10年で初期投資を回収できて、11年目以降から利益が残る)と言われています。
当社の投資採算表によれば、コインランドリーの場合、年間売上700~800万円台の繁盛店を作れば、その半分くらいの回収期間5年=利回り20%くらいにすることは可能ということが、見て取れます。
※資料02をご覧いただき、その他に、何か気づくことはありますでしょうか?
まず、現在の「平均的な売上のコインランドリー」=年間500万円~600万円程度では、回収期間が20年とか30年、利回り10%以下ですから、マンションに投資したほうが、収益性が良いということが、わかると思います。
これは、現在の平均的売上のコインは、前述したように「個人の土地持ち大家さん」が経営しているので、家賃が実質0円、清掃は自分でやる、建物や看板等、初期投資にもそれほどお金をかけない・・・ということで、成り立っているためです。
元々食べるには困っていない人がやっているので、問題にならないのです。
法人がビジネスとしてやるなら、この売上では面白くありません。
次に、売上が高くなればなるほど、利益が残りやすくなる商売であることも、見て取れます。
かかる固定費は、ほぼ一定で、粗利率が70%ありますから、売上が伸びた分は、そのまま利益として残ることになります。
当たり前のことながら、「初期投資を安く抑えて」「売上を高くする」ということが、儲けを生み出す鉄則であるということが、表から見てとれます。
お金をかけて豪華なものを作れば、売上は上がって当然です。
お金をかけずに、どうやって売上を最大化してゆくのか・・・それが「経営力」であり「マーケティング力」なのです。
売れるコインランドリーの経営力とは?
基本的には、現在、主流となっているコインランドリーの手法の「逆」をすれば、売上が上がります。
それが「お客様の望んでいること」あるいは「これまで不満に思っていたこと」であれば、なおさらです。
当社のプロデュースするコインランドリーの特徴を一言であらわせば「温かみのあるコインランドリー」「面倒なはずのお洗濯が、楽しい時間に変わるコインランドリー」ということになります。
いくつかのポイントを紹介します。
- 「暗い」でなく「明るい」
- 「モワッと臭い」でなく「スッキリした空気」
- 「居心地が悪い」でなく「居心地良く」
- 「性悪説」でなく「性善説」
- 「メーカー支給品ポスター」でなく「店独自のオリジナルポスター」
- 「古い機械」でなく「新しい機械」
- 「メーカー支給の機械ラベル」ではなく「店独自のオリジナル機械ラベル」
- 「無機質」ではなく「人っぽさ」
- 「それだけ」ではなく「それ以上」
- 「作りっぱなし」ではなく「育てる」
どことなく「暗い」という雰囲気を一新し、「明るい」雰囲気を作り出します。
照明の本数や内容、壁紙、フロア等の演出で、雰囲気は一新されます。
プライバシーを守りながらも、開放的な空間を作ります。
独特の「匂い」や「湿気」が、私個人として、既存のコインランドリーのなかで最もイヤな特性のひとつでした。
清掃や空調、消臭アイテムの投入等によって、これをなくしてゆきます。
「出して、帰って、取りに来る」のも「終了まで、待つ」のも、お客様の自由ですし、駐車スペースの関係上「長居してもらっては困る」という場合もありますが、「できるだけ、店内で待って過ごしたほうが快適」というコンセプトで、店の内装やアイテムを作ります。
コインランドリーには「××禁止」とか「××するな」という趣旨の貼り紙が、たくさんあります。もちろん必要なのですが、その表現方法を工夫することで、お互いが気持ちよく使えるようにできますし、そのようなハートフルな姿勢がお客様に伝わります。
失礼ながら、メーカー支給の店内パネルやポスターに、売上の上がる「魅力」を感じたことは、一度もありません。手間暇をかけ、その店の雰囲気やコンセプト、ライバル他社との力関係に応じた、オリジナルの店内パネルとポスターを投入することで、差別化が図れます。
クリーニング商売と比べて、コインランドリーは「人」によって、お客様を繋ぎ止めておくことが難しい商売です。お客様は、最新の機械に流れてゆきやすいのです。既存のライバル店のお客様を奪うために最適な台数構成(水洗機・洗乾機・乾燥機の台数と容量)を考え、新品を投入します。
もしくは後述⑦によって新品に見えるような中古機での勝負が最適です。
「商品力」として、のものの性能だけでなく、パッケージングも大事な要素です。機械に貼り付けるラベルも、オリジナルで制作したほうが、スマートかつセンス良くなります。
ラベルもポスターも、貼れば貼るほど、ダサくなる。でも貼らないと、伝わらない。
そこを上手くクリアするよう、機械を店と統一感のあるオリジナルデザインで、デコレーションしてゆきます。
機械があって、説明書きパネルがあるだけ・・・ではなく、スタッフによる手書きのポスターや観葉植物、忘れ物へのラッピングや丁寧な取扱い、清掃中の挨拶、お声かけ等で、人と人とのふれあい感を演出します。
「洗うだけ」「乾燥するだけ」ではなく、既存のコインランドリーが実施していない、無料でできる各種のサービスを充実させます。
作ってしまえば、あとは、勝手に売上が上がる・・・のではなく、チラシを定期的に投入する、季節に応じた店内POPやポスターを作る、新サービスを導入する・・・等々、お客様が来るたびに、新しい発見がある・・・そんなお店を「育てる」という発想で作ります。
クリーニング店が、参入するときのコツは?
コインランドリーをオープンする時、クリーニングとの併設スタイルにすることは、非常にメリットが大きいと感じています。
今後、コイン業界も競争が激しくなってきたとき「人的サービス力」に勝る店舗が、勝ち残ることが予想される。という点が、最大の理由です。立地や機械設備の内容や多さだけでは、勝てなくなる時代が、すぐにやってくるはずです。
直接的には、採算表にある「人件費」を、クリーニングスタッフが兼任すれば、抑えることができるようになる点、看板をはじめとする建物への投資も按分することができるようになる点なども、メリットがあります。
しかし、もう一度、原点に戻って、考えれば
・・・初期投資が1500万円~2000万円です。クリーニング店舗なら1店舗の初期投資が500万円平均ですから、3店舗ほど新規出店することも、十分可能です。
クリーニング店を、きちんと作って繁盛させることができるノウハウがあり、生産力に余力がある会社にとっては、コインランドリー1店舗よりも、クリーニング店3店舗のほうが、はるかに「投資対効果」は高くなります。もちろん、コインランドリーよりも「人の苦労」等々も増えますが・・・。
そのような観点から考え、最後に、クリーニング店が参入するときのアドバイスをまとめます。
- 無理に「コインランドリー」を作ることはない。
- クリーニング店を出店するなかで、最高の立地に、クリーニング店だけでは広すぎる店舗が出てきた場合に、コインランドリーを隣に作れば良い。=出店場所のオプションがとても広がり、採算の合う店が作りやすくなります。
- マンション投資よりも利回りが良く、自分の努力で売上を上げることができ、人手もかからないので、「将来のために、会社が作っておく自己年金」の装置を作る・・・という気持ちで経営したほうが良い。
- 作るなら「単に、作れば良い」のではなく、限られた投資で、コインランドリーの売上を最大化するノウハウで、作って、運営しなければならない。
- 資金繰りの悪い会社・財務内容の悪い会社は、大きなリスクを冒してまでやらないほうが良い。